今の子供と、大人との違い
かつて自分たちが当たり前にできていた動作や遊び──それは、いまの子どもたちには必ずしも当てはまりません。
今の子どもたちと、昭和・平成期に育った大人たちの間には、「身体の使い方」や「運動経験」において、想像以上の隔たりがあります。
この違いを理解せずに、従来通りの指導を続けてしまうと、成長を阻害するばかりか、ケガや早期離脱を引き起こすリスクすらあります。
基礎動作が当たり前に出来ない
基礎動作については「今の子たちの問題点」 をお読みください。
現代の子どもたちの多くは、かつてほど外遊びを通じて多様な動作を経験していません。
遊びの中で自然と身につけていた「走る・跳ぶ・転ぶ・避ける」といった基礎動作が、十分に形成されていない状態です。
一方で大人たちは、自らの子ども時代にすでにそうした動作を獲得済みです。
だからこそ、いまの子どもたちがなぜ「できない」のか、実感として理解しづらいのです。
大人は成長とともに習得済み
なぜ大人はできるのか、それは「昭和後半から平成前期を生きてきた」ただそれだけです。
ゲームやミニ四駆など室内遊びも多かったですが、程よく屋外で遊び、色々なことをしてきたからです。
今の子の様に同じ競技だけをやり始めたのは中学になってから。
それでも、しっかりと身体の使い方を習得した状態なので、中学から競技を始めても何となく出来るようになるのです。

昔の子はオールラウンダー、今の子は特化型
自分たちの子ども時代を思い出してください。
例えば中学の球技大会。
どんな球技であれ、前線で活躍するのは運動部員たちではありませんでしたか?
フォームはきれいではなくてもそつなくこなし、部活が違う者同士でもチームプレーが出来ていませんでしたか?
基礎がしっかりしているので、普段と違う競技でもイメージ通りに体を操り、それなりにやれるのです。
しかし今の子たちは違います。
身体の基礎ではなく、競技特化のトレーニングを早期に受けているため、その競技以外では思うように動けません。
野球なら野球特化型の能力しかないため、それ以外の競技は苦手です。
「スポーツ万能」という言葉は、もはや過去のものになりつつあります。
特化型とはいっても頭打ちはくる
競技特化型のトレーニングを受けた子どもたちも、一定の段階までは成長します。
しかし基礎がないため、あるレベルに達するとそれ以上のパフォーマンスが出来なくなります。
こういった問題に周りの指導者や親御さんが気づくと、フォーム改善(投球・シュート・ドリブルなど)や、センスが足りない、集中力が足りない、練習量が足りない、気合が足りない、と解決を図ろうとします。
しかし、そもそもそのフォームを可能にする“身体の土台”が不足しているのですから、上手くいかないのは当然です。
スポーツは、いまや「科学」の時代
感覚で、気合で、センスでやれた筋肉時代は終わりました。
より合理的、効率的、人権的でロジカルな考え方に変わりました。
体幹トレーニング・栄養管理・自己ケア・休息など、ロジカルな要素が当たり前のように取り入れられています。

それにも関わらず、いまだ昭和・平成の練習観に縛られ、感覚や経験則に頼った指導が続けられている現場も少なくありません。
さらに、今風の練習を「感覚」で見よう見まねで導入し、やった気になっているケースを多く見ます。
「努力がは報われるとは限らない、正しい努力しか報われない」
「できるけどやらないのと、できないでは大きな違い」
「かしこくなければスポーツ選手にはなれない」
これは誰かの受け入りですが、てつ接骨院でよく伝える言葉です。
競技の練習なんか「あと」でいい
競技の技術指導は、子どもの基礎能力が備わった後でも十分に間に合います。
子供のうちは身体づくり・ケアの習慣・運動を楽しむ心を育てることこそが、将来の伸びしろを広げることに繋がります。
練習の前半はそういった基礎能力の引き上げや、ケアの大切さを教え、後半はゲーム形式でその競技の楽しさを教えていく。
そして、本当に本気になった時、周りの大人が正しい知識をもってサポートしてあげられる体制作りも必要だと思います。
ラグビーや相撲、テニス、ホッケーなど高校から始める競技もあります。
いざレベルを上げていこうと思った時に、基礎能力がきちんと備わっていれば、伸びしろしかないですし、競技も選び放題だと思いませんか?
じゃあ何すりゃいいの?
ということをよく聞かれますが、まだプロ意識のない子供たちにロジカルに指導しても理解ができないのが現実です。
そこで僕は「鬼ごっこ」をたくさんやらせてみては?と提案します。
広い敷地を縦横無尽に走り、時にぶつかりそうになり、つかまりそうになり、身をよじる、切り返す、滑る、跳ぶ、転びそうになる。
鬼ごっこには、スポーツに求められるあらゆる動きの要素が、無理なく含まれています。
小さい頃、外遊びをたくさんしていた元子供なら、他にも楽しく体を使う遊びがまだまだありますよね。
ぼくらの地域では「ドロケー」「ポコペン」「缶蹴り」などもいいですね。
楽しく体を動かす中で、子どもたちは基礎動作を身につけ、運動に対する自信を育てていきます。
てつ接骨院の役割
ここまで読んでいただいて、「お前にこの競技の何がわかる」とご立腹の方もいるかもしれません。
しかし接骨院は、チーム、指導者、保護者、サポーターが皆同じ方向を向き、妄信的になってしまっている中、唯一、練習環境の一歩外から客観的に見る「第三者の立場」で子どもたちの身体と向き合える、貴重な存在だと自負しています。
だからこそ冷静に今の状況を判断する必要があると思っています。
日々、生活のほとんどをスポーツに割き、時に犠牲になり、時につらい境遇に立ち、その環境だけを信じている子どもたちを見てきた接骨院だからこそお伝えしたい。
今一度、子どもたちの“身体の土台”を見直すことの大切さを、共に考えていただけたら幸いです。

更新履歴:22.3.31/23.8.9


