スポーツ復帰のしかた
更新履歴:20.5.29
ケガや故障によりしばらく競技を休止していた人の次の課題として競技復帰があります。
何も考えずに休止前と同じメニューをいきなり始めたり、まずは馴らしからといいながら楽しいゲーム形式の練習から始めるとケガの危険があります。
しっかりと1日ずつ段階に分けて復帰メニューを作りましょう。
練習継続しながらの治療にも必要
また軽症で練習を続けながら治療をしていくときの参加メニュー調整にも同じことが言えます。
以下のフェーズを参考に、症状が悪化しない、治療効果を打ち消さない程度の段階にセーブし、練習メニューの調整をしましょう。
特定の動作ではなく、練習の開始直後、後半、終了後など、練習時間によって痛みが出る人は「スポーツ障害の重症度と競技休止の目安」をご参考ください。
フェーズ0:休止中の過ごし方
復帰のためのバージョンアップ
ただ休む必要はありません。とても貴重なバージョンアップ期間です。
休止中にどう過ごしたかはスポーツ復帰に大きくかかわります。
休止中の考え方は「スポーツ障害での安静」をご覧ください。
休止中にやるべきことは競技特有のスキルではなく、体そのものの機能を高める運動。
いままでおろそかにしていた、可動域・柔軟性・体幹などのパフォーマンスを高めます。
「コンディショニング」と呼ばれるものです。
- 体幹トレーニング
- ストレッチ
- 関節エクササイズ
- フォームチェック など
これにより復帰がより早く、さらに休止前より動きがいいなんてこともあります。
フェーズ1:慣らし運転
負荷の軽い運動で休眠状態から復帰。
まずは「体を動かす」ことに重きを置いた「一人で行う」シンプルな動作。
急に複雑な運動や、強度の高い運動を行ってはケガや事故の原因となります。
競技の基本動作を行うのに必要な機能が回復しているか確認しましょう。
- ジョギング
- ウォーミングアップ
- コーディネーショントレーニング
フェーズ2:動作確認 低強度
競技特有の低強度の動作確認
あくまでリラックスして「負荷を調整しながらできる」競技特有の基本動作です。
フォームが崩れてしまっていないか、動作中・動作後・翌日に痛みがないかを確認してください。
これがクリアできれば強度を上げていきます。
- ランニング
- 素振り
- パス練習
- キャッチボール、ストローク
フェーズ3:動作確認 高強度
競技特有の高強度の動作確認
少し力むレベルの「瞬発的に高負荷をかける」競技動作。
低強度と同様、フォーム・痛みの出現を確認してください。
- ダッシュ、ジャンプ
- ピッチング
- 遠投、ロングキック
- バッティング
- サーブ
- アタック、スマッシュ
- シュート練習
フェーズ4:複合動作確認
上記の動作を組み合わせた少し複雑な動作の確認
動作を単純なものから複雑なものへと変え、走りながら蹴る、打つなど軽めの競技練習を開始しましょう。
複合動作がスムーズに出来なければ対人練習は危険です。
- ドリブル
- ラリー練習
- パス回し
- 切り返し・ジャンプ・ダッシュを組み合わせた動作練習
フェーズ4:グループ練習
対人プレーの感覚チェック・動作イメージと体の整合性を確認
チームでの連携や、思い通りに体が使えているかの確認です。
足がもつれたり、思わぬ接触が起こったりしないよう、少しづつ複雑な動作にしていきましょう。
- 1on1、3on3
- フォーメーション練習
- 「軽め」のゲーム形式
フェーズ5:ゲーム形式
臨機応変な判断・動作の確認
ここでやっとゲームができます。
ゲーム形式はそのシーンによって様々な動作を複合して行います。
しかもそれをその都度判断し、継続して行わなければならないので、持久力・集中力が切れてくるとミスが出始めます。
痛みを抱えながらのゲーム練習は集中力や注意力が散漫となり、思わぬミスを招き、再発どころか新たなケガを招きます。
しっかりとパフォーマンスが維持できる人数・時間・負荷で行いましょう。
焦らず目的を見失わない様に
1日ですべてのフェーズを確認することは不可能ですし、やってはいけません!
焦らずにフェーズごとに1日~3日、長くて1~2週間かけてもいいです、確実に確認してから次に進むようにしましょう。
また競技も練習メニューも人それぞれ。
フェーズに分けてはいますが、これはグラデーションのように明確な境界はありません。
強度や負荷や時間で変わってしまうので、自分自身で判断するしかありませんが、ちょっと物足りないなと感じる程度で切り上げましょう。
欲をかいて失敗し、次の日からまた休むことにならないよう、堅実に明日へつなげ、徐々に体力・感覚を取り戻していきましょう。
きちんと考えること、感じることが大切!!
判断するために「適切な運動量、フェーズ分けやメニューを考える事」と「体の状態や反応、感覚を感じ取る事」が必要なのですが、この2つに「ズレ」が起きていることが危険なのです。
ズレが起きているからこそ、今の運動強度に体がついてこれていないことに気づかないわけで「大丈夫だろう思ったけど、体がついてこなかった」ということが起こるのです。
自分の体とよく相談することが大切です。